saganaka_no_haishasan

2026.09.20 ブログ

歯科医師の僕なら、こう選ぶ。

第6回「もし僕が『この歯は抜いた方がいい』と言われたら、すぐ抜くのか?」

院長メッセージ

こんにちは。

さがなかの歯医者さんやまもと 院長の山本真志です。

シリーズ、

「歯科医師の僕なら、こう選ぶ。」

第6回です。

今回のテーマは、

「もし僕が『この歯は抜いた方がいい』と言われたら、すぐ抜くのか?」

です。

歯医者さんで突然、

「この歯を残すのは難しいですね」

「抜歯を考えた方がいいと思います」

そう言われたら、皆さんはどう感じるでしょうか。

ショックだと思います。

「本当に抜かないといけないの?」

「まだ痛くないのに?」

「普通に噛めているけど?」

「何とか残せないんですか?」

そう思うのは当然です。

僕も、自分自身の歯なら同じです。

では、

歯科医師である僕自身が、

「この歯は抜いた方がいい」

と言われたらどうするのか。

先に答えを言います。

僕なら、その場ですぐに「抜いてください」とは言わないと思います。

まず、

「なぜ残せないのか」を理解します。

そして、

残す方法が本当にないのかを確認します。

ただし、

十分に説明を聞いて、

残すことによるデメリットの方が大きいと納得したら、

僕は抜歯を選びます。

今日は、その判断について本音でお話しします。


自分の歯なら、やっぱり残したい

これは歯科医師でも同じです。

自分の歯は残したい。

できれば一生、自分の歯で食べたい。

インプラントも、

ブリッジも、

入れ歯も、

歯を失った後の大切な治療方法です。

でも、

可能であるなら天然の歯を残したい。

僕自身もそう思います。

だから、

「抜歯ですね」

と言われても、

僕ならまず、

「本当に残せない状態なんですか?」

と聞きます。


僕なら「なぜ抜く必要があるのか」を聞きます

一言で「抜歯」といっても、

理由はいろいろあります。

重度の歯周病で、歯を支える骨が大きく失われている。

歯の根が大きく割れている。

虫歯が歯ぐきの深いところまで進んでいる。

根の治療をしても感染のコントロールが難しい。

歯そのものが、修復できないほど壊れている。

さまざまな理由があります。

だから僕なら、

「抜いた方がいいです」

という言葉だけでは判断しません。

「なぜですか?」

と聞きます。

どこが悪いのか。

レントゲンではどう見えるのか。

歯の根はどうなっているのか。

歯周病なら骨はどの程度残っているのか。

残した場合、どんな問題が起こる可能性があるのか。

そこまで理解してから考えます。


「痛くないから残せる」は違います

患者さんからよく聞く言葉があります。

「でも先生、この歯、痛くないんです」

これは、とても自然な疑問です。

痛くない歯を抜く。

直感的には納得しにくいと思います。

でも、

痛みの有無と、歯を残せるかどうかは別の問題です。

重度の歯周病でも、強い痛みがないことがあります。

歯の根が割れていても、一時的には症状が落ち着いていることがあります。

大きな感染があっても、慢性的に経過して痛みが少ないことがあります。

だから僕自身なら、

「痛くないから残してください」

とは言いません。

痛みではなく、

その歯が今どんな状態なのか

で判断します。


では、どこまで残すことにこだわるのか?

ここが今回、一番お話ししたいところです。

僕は、

歯を残すことには、かなりこだわりたい

と思っています。

残せる可能性があるなら、

歯周病治療。

根管治療。

被せ物。

状態によってはMTAなどを用いた治療。

さまざまな方法を検討します。

必要なら、

別の歯科医師の意見を聞くことも考えると思います。

自分の大切な歯です。

納得するまで考えたい。

ただし、

ここには一つ大きな条件があります。

「残すことが、その歯と口全体にとってプラスになるか」

です。


「残せる」と「残した方がいい」は同じではない

これは、ぜひ知っていただきたいことです。

歯科医療では、

技術的には何とか残せる。

でも、

長期的な予後が厳しい。

という歯があります。

例えば、

大きく壊れていて、残っている健康な歯質が非常に少ない。

強い感染を繰り返している。

歯周病によって支えがかなり失われている。

歯の根が大きく割れている。

こういった場合、

何とか治療して一時的に残せたとしても、

その後に再び問題が起こる可能性があります。

だから僕なら、

「残せますか?」だけではなく、「残した場合、どのくらい期待できますか?」

と聞きます。

ここは大きな違いです。


「抜かない歯医者=良い歯医者」とは限らない

インターネットを見ると、

「絶対に歯を抜かない」

「どんな歯でも残します」

という言葉を見かけることがあります。

患者さんからすると、とても魅力的に感じると思います。

僕も歯科医師として、

できる限り歯を残したい。

これは間違いありません。

でも、

「抜かないこと」そのものが治療の目的になってはいけない

と思っています。

残すことで感染が続く。

何度も腫れる。

噛めない。

隣の歯や周囲の組織に悪影響を及ぼす。

何度も治療を繰り返す。

患者さんの時間や負担が大きくなる。

そこまでして、

「天然歯を残したから成功」

とは僕は思いません。


僕が守りたいのは「その1本」だけではない

もし僕自身に、

残すのが非常に難しい歯があったとします。

もちろん、その歯は大切です。

でも、

口の中には他にも歯があります。

だから僕なら、

その1本だけではなく、

口全体を見て判断します。

その歯を残すことで、

隣の歯にどんな影響があるのか。

噛み合わせはどうなるのか。

感染源として問題にならないのか。

将来、その場所をどう治療するのか。

残っている他の天然歯を守れるのか。

僕が本当に守りたいのは、

「この1本を抜かなかった」という結果ではありません。

10年後も、口全体が安定してしっかり噛めること。

そこです。


僕なら「抜いた後」まで聞いてから決めます

もう一つ、

僕自身なら必ず確認することがあります。

それは、

「抜いた後、どうするのか?」

です。

抜歯だけを単独で考えません。

抜いた後、

インプラントを検討するのか。

ブリッジなのか。

入れ歯なのか。

状態によっては経過を見るのか。

そのために骨や歯ぐきの状態をどう考えるのか。

隣の歯はどうなるのか。

噛み合わせはどう変わるのか。

そこまで含めて考えます。

「とりあえず抜いて、後は後で考えましょう」

僕自身なら、緊急性がない限り、それだけでは少し不安です。

出口まで考えてから入口を決めたい。

これが僕の考え方です。


セカンドオピニオンを聞くのは悪いことではありません

もし、

「抜歯しかありません」

と言われても、

どうしても納得できない。

自分では決められない。

そんな時、

僕ならセカンドオピニオンを考えると思います。

これは、

最初の歯科医師を信用していないという意味ではありません。

抜歯は、

一度行えば元に戻せない治療です。

だからこそ、

自分が納得するために別の意見を聞く。

僕は、それも一つの方法だと思っています。

ただし、

自分が聞きたい答え、

つまり

「絶対残せますよ」

と言ってくれる先生を延々と探し続けるのとは違います。

複数の意見を聞いたうえで、

メリットとリスクを理解し、

最後は自分で決める。

僕なら、そうします。


もし「抜いた方がいい」と納得したら?

ここまで確認して、

それでも、

残すことのメリットより、

残すリスクの方が大きい。

長期的に安定させることが難しい。

抜歯した方が、口全体の未来にとって良い。

そう納得できたら、

僕は抜歯を選びます。

もちろん悲しいと思います。

もっと早く何とかできなかったのか。

そう思うかもしれません。

でも、

そこで無理に残すことにはこだわりません。

なぜなら、

僕の目的は、

「自分の歯を1本でも多く持っていること」ではないからです。

自分の口でしっかり噛める。

痛みや腫れを繰り返さない。

残っている歯を長く守れる。

10年後、20年後も食事を楽しめる。

そのためなら、

必要な抜歯を受け入れることも、

歯を守る治療の一つだと思っています。


抜歯は「諦め」ではない

患者さんに、

「この歯は抜いた方がいいと思います」

とお話しする時、

僕自身も簡単な気持ちではありません。

できれば残したい。

歯科医師なら、多くの人がそう思っているはずです。

だからこそ、

抜歯を提案する時には、

その理由をしっかり説明する必要があると思っています。

そして患者さんにも、

抜歯=治療を諦めた

とは思ってほしくありません。

時には、

問題のある歯を抜くことで、

感染や痛みの原因を取り除き、

残っている歯を守り、

口全体を立て直すことができます。

つまり、

抜歯が

「これから残す歯を守るためのスタート」

になることもあるのです。


そして僕なら「なぜこの歯を失うことになったのか」を考えます

抜歯が終わった。

インプラントやブリッジを入れた。

そこで終わり。

僕なら、そうはしません。

最後に必ず考えます。

「なぜ、この歯を失うことになったのか?」

虫歯だったのか。

歯周病だったのか。

歯ぎしりだったのか。

治療を繰り返した結果なのか。

長期間、歯医者に行っていなかったのか。

原因を考えなければ、

次の1本でも同じことが起こるかもしれません。

失った歯を戻すことはできません。

でも、

その経験を、残っている歯を守るために使うことはできます。

僕なら絶対にそうします。


結局、僕ならどうする?

今回の答えです。

もし僕自身が、

「この歯は抜いた方がいい」

と言われたら、

その場ですぐに抜歯を決めるのではなく、

まず、

なぜ抜歯が必要なのかを理解します。

残す方法がないのか。

残した場合のメリットとリスクは何か。

どのくらいの期間、安定して使えることを期待できるのか。

周囲の歯への影響はどうか。

抜いた後はどうするのか。

必要なら、別の意見も聞きます。

そこまで確認したうえで、

残すことが長期的に合理的なら、

僕は全力で残したい。

でも、

残すことで問題を先送りするだけになり、

口全体の未来にマイナスが大きいと納得したら、

僕は抜歯を選びます。

僕が守りたいのは、

「その歯を抜かなかった」という事実ではありません。

その人が10年後も、20年後も、自分の口でしっかり食べられる未来です。


最後に

歯を抜く。

これは、

患者さんにとって大きな決断です。

だから、

その場で全部理解できなくてもいいと思います。

迷ってもいい。

不安になってもいい。

「もう一度説明してください」

と言ってもいい。

「他に方法はありませんか?」

と聞いてもいい。

「先生だったらどうしますか?」

もちろん聞いてください。

私たちが大切にしているのは、

「話をしましょう」

ということです。

抜くのか。

残すのか。

どちらかを一方的に決めるのではなく、

今の状態を知って、

選択肢を知って、

未来を考えて、

一緒に決める。

そして、

もし抜歯という選択になったとしても、

そこで終わりではありません。

そこから、残っている歯をどう守るかが始まります。

歯を残すことには全力を尽くす。

でも、

歯を残すことだけを目的にはしない。

僕が守りたいのは、

その1本だけではありません。

その人の口全体と、その先にある人生です。

僕自身が患者だったとしても、

そんな視点で治療を選びたいと思っています。


次回予告

第7回「もし僕が『被せ物は保険と自費、どちらにしますか?』と聞かれたら?」

銀歯?

白い保険の歯?

ジルコニア?

セラミック?

ゴールド?

値段だけ見れば、大きな差があります。

では、

歯科医師自身なら何を基準に選ぶのか?

「高いものが一番」という話にはしません。

見た目。

強度。

削る量。

噛み合わせ。

歯の場所。

再治療。

そして10年後。

全部を考えたうえで、

僕なら自分の歯に何を入れるのか。

次回は、このシリーズだからこそ書けるところまで、本音でお話しします。